弟子・あかりの年輪「箱職人あかり」

〜箱屋常吉の若き箱職人あかりの成長〜

箱職人あかり

箱屋常吉の若き箱職人あかりの弟子修行の日々を成長記録として綴ることになりました。第一回は、入社して3年目を迎えた弟子・あかりの紹介を兼ねて、本人への直撃インタビュー!

──では、まず入社のきっかけと言いますか、なぜこの「箱屋常吉」の伝統工芸の道を進もうと思ったのでしょうか?

あかり:まず、ちっちゃい頃からものづくりが大好きだったし、絵を描くことも大好きだったっていうのが大前提にありまして。
それから「和風総本家」とかテレビ番組で職人さんの特集をやっていたのを観て、「ものづくりを極めてる人が職人なんだ!」って思って。職人さんがすごくかっこよくて。好きなことを追求していったら、こんな風にかっこよくなれるんかなーって思ったのが最初のきっかけです。もう本当にちっちゃい頃から絵描くことがずっと好きだったから画家になろうかなとか思ってたんですけど、だんだん成長していくにつれて、絵で生きていくっていうのは多分私は無理だなって思い始めて、、、。
絵と同じくらいものづくりもずっと好きだったから、ものづくりを続けていこうと思って、高校や専門学校もものづくりとかデザインの学校に進学しました。
県内の専門学校に通って、いざ就活するってなった時に、職人ってどうやってなるんだろう?就活ってどうするんだろう?と(苦笑)。一応、勤務先は大阪でって考えてたんで、「大阪 職人」とか「大阪 木工」とか「大阪 伝統工芸」みたいなキーワードで検索しまくったり、あべのハルカスとか百貨店でやっている職人展へ何回も足を運んで、直接職人さんにこれはどういう技ですか?とか聞きに行ったり。「学生なんですけど、こういうのに興味あるんで教えてください」って、職人さん一人ずつに声かけに行きました。

──すごいですね。かなり能動的ですね(笑)。

あかり:うちの父は普通の会社員だし、知り合いに職人さんとかもいなかったので、ツテっていうのが全くない状態で。職人って家系とかそういうのかなとも思ったんですけど、そういうの何もないし、とりあえず職人さんとのつながりを作らなきゃ!と思って話を聞きに行きました。
でも、誰に聞いても「難しいよ」とか「この世界厳しい」と言うばかりで。大丈夫かな?ってちょっと心配になりました(苦笑)。弟子入りっていう形も、自分でバイトしながら技を教えてもらうのか、それともその工房の社員や従業員になるのか。そもそも「弟子」がどういう形を取るものなのか、そんなことさえもわからなかったので、とりあえずいろんなとこに話を聞こうって思って。

──なるほど。それは確かにそうですね。

あかり:職人を調べている時に、最初は建具屋さんの組子細工とかをやってるところに見学しに行かせてもらったんですけど、でも建具ってすごく重たいから多分女の子じゃ厳しいなぁと思って。先方も、雇うなら男の子がいいっておっしゃっていたので、ここは私にはちょっと無理かなと。ものづくりならなんでも好きやったので、違う業界やいろんな分野に声かけてみようと思って次は染色屋さんに声かけたけど、メールも何も返事こなくてダメだったんだなって。で、その次にこの箱屋常吉とべっ甲のアクセサリー屋さんに声かけたら、両方とも「 1 回来てみる?」って言ってもらえて工房を見に行って。そして、両方ともでちょっとの間だけバイトさせてもらえることになりました。 両方の工房に「もう 1つ別の業界の工房と迷ってるんです」と正直に話したら、「バイトさせてあげるから、どっちが自分に向いてるか比べてみたらいい」と、両方の工房が言ってくださって。どちらのバイトもめっちゃ楽しかったです(笑)。それで、実際やってみて木工の方が自分に合ってるなと思って箱屋常吉を選びました。
ここ(箱屋常吉)やったら、それこそ専門学校で勉強してきたデザインの技術とかも活かせるなと思ったし、パソコンやイラストとかでもいっぱい技術使ってもらえるなって思ったからここに来ました。

箱づくりのお仕事

工房の様子

──具体的に箱の作りのどういうところが楽しいですか?

あかり:大阪に木箱屋さんがあるってこと知らなかったし、ネットで見た時に「箱屋さん、何それ?」って思って(苦笑)。大阪って桐箪笥とか包丁とかは聞いたことあるけど、箱屋さんって聞いたことなかったし。「箱屋さん」って言ってるだけでかっこいいなー。誰も知らんとこにおるのかっこいいなーと思って(笑)。今も作業が難しいところも多いですけど、難しい方が私は楽しいから。最初できなかったのが、できるようになるのも楽しいし。なんか木 1 個ずつ表情が違うのを見てるのもすごく楽しい。

──仕事が楽しいっていうのがすごく伝わってきます(笑)。では、入社されてからのお話をお聞きしたいと思います。いきなり箱作りはないと思うので、最初の下積みと言いますか、いろいろと過程があると思うんですけど、最初はどういう感じでお仕事が始まったんでしょうか?

あかり:お試しバイトを 1ヶ月ぐらいやらせてもらった時は、曲げの作業(お湯に浸けた板を曲げていく作業)をやらせてもらったりとか、箱にボンドをつけて組んでいく作業とかですかね。ちょっとずつこうやって、ここを押さえてとか、糊の量これくらいでとか教わりながらやってましたね。あとは師匠に付いてちょこちょこといろいろ。多分、箱作りの一番楽しいところじゃないけど、ワークショップとかでもよくやらせてもらうような、誰でもできるわけじゃないけど、割とハードルの低いところからでした。

──なるほど。で、ちょっとずついろいろ作業が増えていったと。途中で工房が引っ越しになって、フォークリフトの免許を取ったとお聞きしたのですが本当ですか?

あかり:フォークリフトの免許は去年取りました。工房の川を挟んでお向かいさんが材木屋さんなので、そこからヒノキを買ってトラックで持って来て、こっちで降ろしてみたいなことをやるんですが、私はまだフォークリフトがめちゃめちゃ下手で、、、。パレットに積んで山積みにしてある買ってきた木をフォークリフトですくって下ろして、直して(仕舞って)みたいな。簡単なことしかやってないですけど。

──免許取り立てですもんね。

あかり:毎日やってたらいいんですが、、、(苦笑)。

ー今どれぐらいの頻度で工房と店舗(箱家)を行ったり来たりしてますか?

あかり:大阪におる日の方が少ないかなぁ。1 ヶ月に 2、3 日ぐらいしか多分大阪にいない。ほぼほぼ工房です。

──じゃあもうずっと工房で作りっぱなしとかそんな感じですか?

あかり:なんか、ちょこちょこ作業してずっと作ってますねぇ(笑)。

──箱作りの工程は、今はもうほぼ一人でこなせる感じですか?

あかり:最初の頃は作業終わる度に師匠に「次は何したらいですか?」って聞きに行っていたけど、最近は次の工程もわかってきたから、自分から次はこの道具用意しとことか、次の段取りしとことか、動けるようになってきたかなぁって。

──3年目ですもんね。箱屋常吉の商品は結構種類が多いと思うのですが、一通りは経験済みですか?

あかり:大体はこなしたかな?まだ何個かはやったことないやつあると思うんですけど。まあ、でも全部の商品の工程を知ってるとかじゃなくて、以前に途中までやってたり、逆に途中から始めるとかもあるから、一通りはまだ作れないですね。師匠が先に材料やパーツとかも用意してたのを途中からやるとかはやったことあるけど、その一番最初の段階をやったことないという商品がまだ結構あると思います。

──最初の段階っていうと、木からパーツを切り出して整えたりするところですよね?

あかり:そうですね、そこがイマイチ、、、。それこそ最初 1 年目とか何もわかってなかったんで、その時にやった作業とか今やろうと思ったら、あれ? 1回やったことあるけど、どうやってやったっけ?ってのがすごく多いです(苦笑)。

──毎日新しいことがあると忘れちゃいますもんね。

あかり:作業で大事だなと思うところをメモしていってるんですけど、覚えること多すぎてもうちょっと訳わからない(苦笑)。

箱職人あかりの作品制作

箱職人あかり初個展「木色-きいろ-」より

──話は変わりますが、ここの店舗がオープンした時に個展をされましたが、そういうご自分の作品はいつ作っているのですか?お休みの日とか?

あかり:寝る前ですね。だいたい寝る前。去年は引越しのために工房が動いてなかった状態だったんで、毎日絵を描くと自分で決めて、毎日ちょこちょこ、ちょこちょこと、もう線 1本だけでも引こうみたいな感じでめっちゃハードル下げて絵を描いて。作品を作り溜めしてたんですけど。今は、まぁやりたくなった時にやってます。自分で「完成!」って思ったやつを溜めてるので、いつのまにかいっぱい溜まってます(笑)。
本当に飽き性なんで、描いてる途中で次の絵描こうみたいなのがめちゃめちゃ多くて、途中のやつがもう50 枚ぐらいあります。多分もう一生続きは描かないだろうなぁ、、、。

──あらら、作品がお蔵入りしてしまった!

あかり:作っていく途中で、「この木に描きたい!」って衝動が起きるのが結構多くて。師匠の厳しい選別によってポイと捨てられたものを私が拾って、「この木はこれに見えるわ」とか。木目見て「これに見えたから、これ描くわ!」みたいな、「この風景に見えたのでこれ描いとこ」とか、とにかく木を見て題材を決めてます。
なんか、その一枚だけとすごく目が合う時があって。ほんと目が合うんですよ。閃いた!みたいな感じで(笑)。ゴミ箱にいっぱい木の破片落ちてるけど、その中でも、「あ、これや!」みたいなのがたまにあるから、それは貯めてます。

──へーっ!そうなんですね。じゃあ、すごく貯まってきますね。

あかり:どうしようかなって感じです(苦笑)。

──では、最後に今後の抱負を。こういうの作りたいなとか、そういうのありますか?

あかり:自分で欲しい箱としては、画材入れの箱が欲しいから作りたいなってのがあります。催事で百貨店に立ってる時にも、「日本画書いてるんですよ」という方から、画材入れる箱作ってくださいっていう声もあったから、もしかしたらそういう方面の人に需要あるかもしれないです。ちょっと作ってみたいなというのがあります。

──確かに、箱型の画材入れって油絵道具ぐらいしか見たことないですもんね。

あかり:私的には、木箱に入ってるってだけでテンション上がるから(笑)。ガラスを組み合わせた箱とか、異素材チャレンジしたいなってのもこっそり考えたり。昭和ガラスとか組み合わせたりしてみたいなとか。

──いいですね、色付きガラスとかも綺麗ですよね。なんかめっちゃ綺麗なのが出来そう。あー、でも画材道具入れとか頑張ってしてほしいな。

あかり:以前、師匠がお友達の革細工屋さんに革細工の道具入れる箱作ってる時があって、それがめちゃめちゃかっこよくて。なんか友達間でそういうのを交換しちゃうのも羨ましいですね。あー、道具箱とか画材入れとかもめっちゃかっこいいかも!

──木の箱って、使えば使うほど味が出てくるからいいですよね。

あかり:自分がテンション上がる箱を作りたい(笑)。

(2024/12/27 箱家にて)